今回は、声優事務所、株式会社アル・シェアさんにインタビューを実施させて頂きました。
『声優になる為にはどうすれば良いのか?』
『声優に必要なものとは何か?』
こういった疑問にお答えさせて頂くべく、株式会社アル・
少し長い記事になってしまいましたが、とても参考になるお話をたくさんして頂きましたので、是非最後まで読んで見て下さい。
目次
声優さんに求められるものとは?
──所属オーディションで、声優さんに求めているものとは何でしょうか?
アナウンサー業と違い、声優業は聞いてくれる人に対して、
音や声、事実を伝えるという事だけが大事ではありません。
声優業は、事実を伝えるというよりも、
感情面をしっかり伝える事が声優・役者に求められています。
短い言葉でも良いので、その人にしかできない『生きた言葉』の伝え方ができたり、
自分が伝えたい事をしっかりコントロールしながら、自由にうまく表現できる事が大事です。
また、マイクに向かって声を録音するのが仕事ですので、技術面も当然重要ではあります。
しゃべりや発声が上手い方は確かにいらっしゃいます。
ですが、オーディションなどで大事なのは、オーディションを受ける人が具体的に
・何がしたいのか
・何を伝えたいのか
というのがハッキリとしている事も重要です。
未経験でも大丈夫なのか
──全くの未経験でも大丈夫でしょうか?
また、経験を積まなければいけない場合はどのように経験を積めばよいでしょうか?
大きく分けて2パターンの進め方があります。
・専門学校に入学
・事務所付属の養成所に入る
という2パターンで、どちらもメリットはあります。
【専門学校について】
専門学校は学ぶ事からスタートします。
教えて頂いた事を、しっかりと積んでいく事ができるというのが大きなメリットになります。
【養成所について】
養成所は、教えるというよりも、『芝居を盗んでもらう』、という事をしていきます。
講師や他の方がやっている事を自分の形に取り込んでいき、
『引き出しを多くつくる』というスキルを鍛えていきながら、より実践的な方向に進めていきます。
また、養成所に通われている方の中には、
養成所の段階からお仕事に関わっていける方もいます。
しっかりとレベルアップしていく手段として、
実際にご自分が携わった仕事などで録音した自身の声を、
テレビやスマートフォンなどを通して聞いた時、
先ずは『自分自身に伝わる声なのか』という部分をしっかり見て、成長していく事が重要です。
未経験の方がやるべき事は、やはり基礎の部分です。
基礎をきっちりと固めていく事で、
声優としても息の長い、ずっと役者(声優)としてやっていけると思います。
声優として気をつける事
──声優として常に気をつけるべき事は何かありますか?
体調管理は大前提ですが、『自分は役者(声優)である』という気持ち部分が大事で、
これは普段の生活から常に意識していかなければいけないです。
普段、生きていく上で自分自身がやった事、見た物、さわった事、動作、しゃべる言葉…など、
それは全て役者の糧(かて)になります。
これを怠り、無意識で過ごしていくと、
仕事の現場などで意識的に鍛えた感性を出す事ができません。
ですので、24時間意識を持って研究・勉強をし続ける事が大事です。
これは極端に言えば、この仕事をしていく上で死ぬまで意識しなければいけない事で、終わりがありません。
つらい事ではありますが、声優としての宿命でもあります。
常に意識をしていく事で、更に伸び、次のお仕事へ繋げていく事ができます。
ボイスサンプルについて
──ボイスサンプルとは何でしょうか?
ボイスサンプルとはお客様(クライアント・企業様)に聞いて頂くものになります。
お客様(企業様)に声を聞いて頂く為に、CDやサイト上で聞いて頂けるような形で、ボイスサンプルが必要になります。
声優さんご自身が、お客様(企業様)にお会いして直接アピールするわけではありませんから、
ボイスサンプルというのはその声優さんの印象を決める、とても大事な物になります。
ボイスサンプル製作時の注意点
──ボイスサンプル製作時の注意点は何かありますか?
ボイスサンプルの作り方、構成などは、誰かが教えてくれるわけではありませんので、
ご自身で考えて作成しなければいけません。
ですので、自分に対してのプロデュース力、
つまりセルフプロデュース力を持っていないといけません。
自分の得意とする物や、周りから良いと言われるものを前面に押し出していく事ができません。
最近は、声優さんの人数がとても多い時代ですので、
聞いて頂けるお客様(企業様)や音響監督さんは、
たくさんのボイスサンプルを聴かなければいけません。
声優さんの人数がとても多いので、ボイスサンプルを始めから終わりまで聞いて頂ける機会はほとんどありません。
そうすると、ボイスサンプルの最初の7秒がとても重要になります。
この7秒で、どれだけインパクトを与えられる表現をできるかが大事です。
開始7秒ですと、
・名前
・セリフやナレーションに入る一言目
開始7秒のこの2つの内容で聞き手は判断しますので、ここでインパクトを与えなくてはいけません。
お客様(企業様)は、場合によっては何万人分ものボイスサンプルを聞いていらっしゃいますので、
ボイスサンプルで名前を聞いた時点で、
「こういう役ができるだろう」
「これくらいの芝居ができるだろう」
という想定をされます。
ボイスサンプルの開始7秒でどれだけ自分というものを表現できているのか、
それがすごく重要になります。
自宅に録音機材が無い場合
──自宅に録音機材がない場合は、ボイスサンプルをどのように作成すれば良いのでしょうか?
ボイスサンプルはできるだけ音質、クオリティが高い物が良いです。
自宅に録音環境や機材がない場合は、ご自身でスタジオを借りて録音するという流れが一般的です。
機材をご自身でしっかり揃えるのもありですが、
スタジオで収録された方が、マイクをはじめ機材が充実していますし、
エンジニアさんに、綺麗に整音もして頂けるので、スタジオ使用がオススメです。
聞いて頂く方への配慮が大事ですので、
ノイズなどが録音されてしまうといけません。
聞いて頂くお客様(企業様)にお渡しする物ですから、クオリティは大事です。
現場で必要とされるスキル
──実際の現場では、どのようなスキルが必要とされますか?
マイクに対して声を収録するので、
マイクに対して一定の音圧で音を吹き込む事ができるかが、技術面において最重要ポイントです。
例えば、録音した後に整音作業をミキシングのエンジニアさんが行うのですが、
音が大きい所、小さい所があると、当然その分、手間がたくさんかかってしまいます。
そうしたら、時間ばかりかかってしまい、現場での作業効率が落ちてしまいますので、
作業がスムーズに進むように音圧を一定にし、録りやすい、使いやすい音を作っていくのが技術面で必要です。
実際に自分の声がどのように録られているかや、
自分の声が他の人にはどのように聞こえているのか、
それを自分の耳でしっかり確かめないといつまでたっても成長しません。
プロとして活躍する方法
──プロとしてやっていくにはどうすれば良いですか?
自分のクセや得意分野を知ってスキルを伸ばす、日々の訓練が必要です。
そして、プロになる以上、自分が商品であるという認識が必要です。
商品である以上、商品のメリット、デメリットを知っていないと、
どういうふうに自分をプロデュースするのか、どのように戦略的に売っていくのかがわからず、
お店にただ闇雲に商品を陳列する事になってしまいます。
ですから、しっかりと自己認識して、他人にも自分という商品をしっかり理解して頂く事が必要です。
オーディションの見た目や服装
──オーディションを受ける際の見た目、服装などは重要でしょうか?
30年くらい前は、声優さんは顔を出さない職業でした。
ですが今は、マルチメディア展開が当然のようになっています。
ゲーム、アニメ、イベントライブで本人が歌ったり、スチール(写真)撮影があったり、
場合によってはビデオクリップを出したり、声優さん自身が露出する機会がとても増えてきています。
そうしますと、それを見て頂く一般の方からしてみれば、
服装はもちろんの事、女性であればお化粧などはとても大事です。
一般の方は、そういった部分をきちんと見られています。
ですから、オーディションでも見た目や服装は大事です。
声のスキルだけではダメ?
──声優だから、声のお仕事だけできれば良いというわけではないのでしょうか?
『声優だからいいや』ではなく、俳優さんなどと同じような感覚で、
『声の仕事もできます』という考えが大事です。
現代は声優さんに求めるニーズが多様化しているので、今はお仕事の垣根がありません。
逆に声優業にお笑い芸人さんが吹き替えをやられてたり、というパターンもあります。
そういう時代ですので、歌だから歌だけ、お笑いだからお笑いだけ、
声優だから声優だけではなく、幅広く対応できる人材がこれからも引き続き必要です。
どのような人間性が求められるか
──オーディション時の態度はどのような人物が望ましいでしょうか?
オーディションでは直接、面接の際に実技として表現して頂きます。
技術や演技力はもちろん大事で、土俵に上がる上で最低限できていないといけない部分です。
その上で、人間性がとても大事です。
『一緒にこの人とお仕事をしたい』
と、思ってもらう何かがないといけません。
今はツイッターやFacebookなど、声優さん個人が、製作をされる方や一般の方と繋がる事ができる時代です。
そうすると、声優さん個人がどういうふうに見られているかというのが非常に重要です。
そういう意味では、人間性の部分が一番見られる部分です。
例えば、スマートフォンのゲームアプリを開発されているお客様など、
一般企業のお客様が当然いらっしゃいますから、
単純に声優さんは芝居だけできればOK、という事ではありません。
名刺の渡し方がわからなかったり、言葉の使い方を知らない方などは、
当然相手に対して良い印象を与えません。
社会のルールやマナーを嗜(たしな)んでいる方、
それができている上でお仕事がありますので、そういった方が望ましいです。
書類審査で落ちる際の欠点
──書類審査で落ちてしまう場合、何が悪いのでしょうか?
ご自身が何をしたいかが書かれていない、そういう方に対しては、
事務所側としてもその人を今後どのように導いていけば良いか判断ができません。
応募者さんが、
『どうなりたいのか』
『そのために何をするのか』
が、具体的に書類に書かれている方が書類選考を通過しやすいと思います。
『過去に何をしてきたか』
『今何ができるのか』
だけではなく、未来に自分が事務所やプロダクションを通して、
『何をして』
『どうなりたいか』
を、きちんと書類に書いて欲しいです。
過去にあった事はただの事実であり、今後もそうだとは限りませんので、
未来のビジョンを明確にして書いて頂く事がポイントです。
事務所所属からお仕事までの流れ
──事務所に所属後、実際のお仕事までの流れはどのようになっていますでしょうか?
プロフィールとボイスサンプルを作成し、そこから事務所がお客様に対して営業を行っていきます。
その中で、声優さんに合う作品があれば、事務所から声優さんにお声がけをします。
そこでお仕事として決定したら、現場に行きお仕事をして頂くという流れになります。
しかし所属すればOKという事ではなく、ご自身でワークショップに通ったり、
事務所が実施しているの訓練や研修などを受けたりして、
更に力を伸ばしつつ、お仕事をして頂く事が望ましく、それが標準的な流れになります。
所属後にもオーディションはあるのか
──お仕事をするには、クライアント様からのオーディションが主な手段なのでしょうか?
アニメ作品はオーディションが多いのですが、洋画やゲームなどの作品は、
お客様にボイスサンプルを聞いて選んで頂くという流れがほとんどです。
基本的には、声優さんがお客様に直接お会いし、
直接アピールしてお仕事に結びつくという事はほとんどありません。
ですので、尚更ボイスサンプルとプロフィールはとても重要な素材になります。
【まとめ】
やはり、現在の声優業界は、声優を目指して頑張っている方はたくさんいらっしゃいます。
その中で、いかにオリジナリティであったり、しっかり仕事を行っていく姿勢や心構え、
将来的なビジョンなどがしっかりある人が求められていると思います。
たくさん目指している方がいるからこそ、社会人としてのマナー、常識などが大事だと思います。
もちろん、声優として今後頑張っていく為にも気合などは大事だと思いますが、
頑張っていく中で、しっかりと自分の長所や短所、目標設定、そういった事を見極めていく事が大事だと思います。
今回のインタビューを通して、お聞かせ頂いた内容は声優業界に限定したお話ではなく、全てのお仕事に共通するお話だと思います。
『芸能界』と言っても、夢を持って突き進む事はとても大事な事ではありますが、
その反面、しっかりと地に足をつけて自分と向き合って進んでいかないといけませんね。
取材協力/株式会社アル・シェア 様
取材日:2015年11月18日
株式会社アル・シェア 公式ホームページ
http://www.al-share.co.jp/